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秘すれば花

●「秘すれば花」・・・秘めるからこそ芸の魅力が保てるという奥義である・・・と世阿弥が彼の著書「風姿花伝」で述べている。
●園芸という言葉も「芸」が付く。やはり、秘すれば花なのか?、むかし良く水やり3年とかいわれていたことを思い出す。これで本当にいいのだろうか?誰がやっても同じ結果になる水やりの方法。これが役に立つ技術として重要ではないかと思う。
●ある産業分野では、技術を他に教えると、自分のところの商品価値が落ちるから他人には絶対教えないということを経営者の方から聞いたことがある。
●また、別のある産業分野では、技術情報はどんどん社外に公表する、そして、まねされる頃には、また新しい技術に取り組んでいると経営者の方から聞いた。技術を秘密にすると、自分にも情報が入ってこなくなるため、長期的に見て、得策ではないそうである。技術を公開することで、他からの情報もどんどん入って来るという。やはり、勢いのある産業分野は違うと思った。その経営者の方は、情報をオープンにすることで得られた別の情報を組み合わせた情報ネットワークを活用して、先日さらなる新しいビジネスへの挑戦を開始した。
●農業技術では、どうであろうか?やはり、「秘すれば花」か?今まで、私は、そうだと思っていた。しかし、先月、東京のある出版社におじゃました折、明るい話題を耳にした。岐阜県でほうれん草の収穫機が実用化して、成果を上げているとの記事を掲載しようとしたところ、地域の農業団体から、写真を掲載することに対して待ったが入ったのだという。「秘すれば花」である。ところが、実際に生産現場で取り組んでいる生産者の代表の方が、次のように言って農業団体の幹部を説得してくれたのだという。「今の岐阜のほうれん草生産の技術は全国のほうれん草生産地の皆様から教えてもらって成り立っている。だから、この情報も岐阜だけで独り占めせずに全国に発信しようではないか」。いや、ご立派である。この話を聞いて日本の農業も将来明るいような気がした。
●日本の農業の衰退の原因の一つが、作ることよりも売り手が少ないことによるものと、昨今強く感じている。よくキャベツの大産地で、キャベツが豊作になると価格調整のために廃棄する風景が報道されることがあるが、このとき、消費者が、安いからキャベツをいっぱい食べるかといったらそうでもない。「折角豊作になったのだから、みんながもっといっぱいキャベツを食べればいいのに」そう思うのは私だけであろうか。キャベツをいっぱい食べるとガン予防にもなるし良いことづくめなのに、そうはならない。
●まだまだ、世の中が良くなる余地はかなり残されているように思う。「生産者と消費者の距離を縮めること」これがキーワードになるような気がする。
●「秘すれば花」これも一つの考え方であるが、「情報をオープンにする気概」、これも大切なように思う。情報をオープンにすることは後ろから追われることを覚悟する必要がある。だから、もっと先に進んでいこうと努力しなければならない。
●芸術と産業、これは別物かもしれないが、園芸と言う産業は、この2つの面を持ち合わせているように思う。オープン体質になることで産業技術全体のレベルが上がれば業界全体がさらに活性化するのだと思う。
  

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2007年07月11日 07:51に投稿されたエントリーのページです。

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