●健康維持のために手っ取り早いサプリメントとして、青汁が知られてます。加工食品である青汁は、ちょっと、菜っぱそのものの品質成分とは違いますが、青汁の硝酸イオン含量とビタミンC含量を自分で調べてみたらおもしろい実験結果が出ましたのでお知らせします。
●ビタミンCと硝酸イオン濃度についての予備知識は、「菜っぱは身体に良い?悪い?」http://www.jagrons.com/archives/2007/03/post_7.htmlをご参照ください。
●材料および方法 これまで、2つの青汁を調べてみました。1つ目は2004年の6月に調べたもので、K社の青汁(80g入り)でした。2つ目は、F社の青汁(100g入り)を2007年の8月に測定しました。測定は、2004年のサンプルは、近畿中国四国農業研究センターの主任研究官時代に測定しました。2007年のサンプルは、昨日、野菜茶業研究所のラボを使わせていただいて測定しました。測定方法はいずれも、RQフレックス法※で行いました。
※詳しくは、藤原ら(2005)http://www.jstage.jst.go.jp/article/hrj/4/3/347/_pdf/-char/ja/をご参照ください。
●結果 1杯分当たりの硝酸イオン含量は、K社で200mg、F社で9mgで、その差はなんと、40倍以上という結果となりました(図参照:画像を詳しくご覧になりたい場合は図そのものをダブルクリックしてください)。ビタミンC(還元型アスコルビン酸)含量は、いずれも、100mg以上(原液では測定不能でした)の含量を示しました(データ省略)。
●考察
許容摂取量 世界保健機構(WHO)によれば、1日の硝酸イオンの許容摂取量は体重1kg当たり3.7mgとされており、体重50kgの女性ならば185mgが上限と見ることが出来ます。F社の青汁は、当時の同僚(女性研究員)に分けてもらったものでした。私と同級生の彼女は、健康のため朝夕、この青汁を飲んでいるとのこと。ということは、彼女はWHOの定める許容量の2倍以上の硝酸イオンを摂取していることになります。早速彼女にこのことを話したところ、「この青汁を飲むことで、お肌の調子もいいのよ」とけろっとしていましたが、その後、1日1杯だけ飲むことにしたそうです。
硝酸の2大摂取源 人間の硝酸の2大摂取源は、「井戸水」と「野菜」です。井戸水での飲料水としての硝酸イオン濃度基準は10ppm以下と決められていますので、1リットルに200mg(2000ppm)も入っていたら、大変なことになります。きっと体を壊すことでしょう(ガンや糖尿病を引き起こす可能性があることが心配されています)。野菜の場合は、ガンなどの疾病を予防する有用成分も豊富に含まれることからこの限りではないと考えられます。しかし、消費者の側としては、安心の面から、有害成分は少ないに越したことはないでしょう。
商品で大きく異なる硝酸イオン含量 F社の青汁は、私が最近愛用している青汁です。これは、1杯分の摂取量が、9mgと非常に少ない結果となりました。これなら安心して飲めますね。青汁の原料のケール(キャベツの祖先に近い形をした非結球の野菜です)は、季節によって品質が変動するので、同じ会社の製品でも、硝酸イオン含量が多いか少ないかは一概に言えません。
消費者の意識 ヨーロッパ諸国では、野菜の品質に対する消費者意識が高く、行政も消費者に目を向けた政策が採られています(科学的裏付けがなくても、危険の可能性があるものには規制値を設けます。たとえば、野菜の硝酸イオン濃度や電磁波など。)。我が国では、どちらかといえば、ヨーロッパに比べると生産者よりの政策が採られているのが現状です。私は、生産者の利益と消費者の利益が高い次元で両立することが、本来あるべき姿だと思います。私は、この2つの両立が実現される日がいつか来ると(来るようにしたい)と信じてますが、現状はそのような状態ではありません。食品の品質に対する消費者意識がもっと高まること。これが重要だと思います。そうすれば、硝酸塩含量を表示した青汁が世の中に出回るようになり、今までよりももっと安心して青汁を飲むことが出来るでしょう。
日本人のビタミンC摂取量 青汁にはアスコルビン酸がかなり含まれていました。これは、食品添加物として添加されているからです。人間の1日のビタミンCの所要摂取量は100mgとされています。菜っぱに含まれるビタミンCは、ほうれん草やコマツナで100g当たりおよそ20〜100mgですが、ビタミンCは熱に弱いため、調理後のビタミンC含量は極端に少なくなってしまいます。これに対して、生で食べる果物などは、摂取効率が良いのです。たとえば、イチゴには100g当たり80mgのビタミンCが含まれますが、1日の所要摂取量を摂るには、大きめのイチゴ(30g程度のもの)を4〜5個食べれば十分と言うことになります。ただ、昨日、野菜茶業研究所の野菜・茶の食味食感・安全性研究チームhttp://vegetea.naro.affrc.go.jp/shokumi/index.htmlの堀江秀樹チーム長とお会いしたところ、「現在の日本の食生活では、日本人のビタミンC不足は考えられない」と言っておられたのが強く印象に残っています。それは、多くの食品に食品添加物(酸化防止剤)として、ビタミンCが含まれているからとのこと。そういえば、ペットボトルのお茶にも酸化防止剤として含まれていますし、食パンにも添加物として入ってました。ビタミンCに限っては、ビタミン不足はあまり心配はいらないようです。