●私が、一様性と多様性という言葉に出会ったのは、高校生の頃、生物学の授業だったと思う。
●生物学は今は分子レベルまでも追求する学問に発展しているが、博物学を起源とする学問でもあり、原点は分類学的なところであると思う。
●ものの違いを整理するには、どこが同じでどこが違うかを見極めることが重要である。一様性とは、多くの共通する特徴のことをいい、多様性とはそれぞれ異なる部分、すなわちそれぞれの特徴に個性のあることをいう。
●たとえば、人の顔で言えば、目が2つ、耳が2つ、口が一つというのが、人の顔に関する一様性と言うことができよう。これに対して、つり目、たれ目、おちょぼ口、出っ歯など、その顔の個性が表れる特徴が人の顔に関する多様性であるといえる。
●ちょっと、この違いを、農学に応用して考えてみよう。たとえば、農薬の使い方、多様性の部分に影響するものと、一様性の部分に影響するもので、安全性や環境への影響が大きく異なります。
★ミトコンドリアは、多くの生物が備えている細胞内のパーツであるが(ここが一様性の部分)、このミトコンドリアの代謝を止めることは、害虫だけでなく、人間やドジョウ、カエルなどにも影響を及ぼす可能性があります。
★BT剤という殺虫剤がありますが、これは、バチルス・チューリンゲンシス菌という、自然界に存在する細菌(バクテリア)を製品化したものです(納豆菌やヤクルト菌もこの仲間です)。このバクテリアは、鱗翅目昆虫(チョウ、ガの仲間)だけにしか作用機作を持たないの(ここが多様性の部分)で、人間やドジョウ、カエルのほか、クモやバッタ、テントウムシなどにも、全く無害なのです。
★以上のように、農薬でも、一様性の部分を狙うか、多様性の部分を狙うかで、他の生物への安全性や、環境への影響について大きく異なる結果につながるのです。
●生物学を学ぶ中で出会った「一様性と多様性」というものの見方、これをキーワードにもう少しいろいろな、事柄を観ていきたいと思います。