●先日、三重県の野菜関係の研究所の方から話を聞きたいとの問い合わせがあり、忙しいのに時間を割いた。
●話を聞きたい割に、メモも取らないし、話を聞きたい理由が曖昧で、はっきりしない。
●せっかくだから、まじめに対応したが、正直うんざりした。まじめに関わっても何のためにもならないと感じた。真剣みがないし、研究だけをやってきた人間だからなのかわからないが、経営の話や、マーケティングの話などまるで理解できない(する気がない)。長年の試行錯誤の末、今の会社のシステムを築いてきたのに、売り方がうまかっただけだとか、簡単に片づけてもらっては困る。売り方がうまかったら、もっと、早く軌道に乗せることができていたし、多くの仲間の能力も引き出せていた。諦めずに続けてきたことが、よかっただけの話である。
●話の節々に感じられる農水批判にもうんざり。「農水省関係の研究機関は好きなことをやっていればいい」、「現場をわかっていない人間が研究しているからだめだ」とか、聞いていてうんざり。誰にものをいっているんだといってやりたかった。
●私は、農研機構フェローである。農林水産省研究機関のOBとして、日本の農業振興に人生を捧げるつもりで今の仕事に取り組んでいる。農研機構は、立派な研究実績がある。その農研機構が三重県の研究所の人間からとやかく言われる筋合いはない。益荒男ほうれん草をはじめとする、今のジャグロンズのほうれん草の生産技術も、ブランドニッポンプロジェクトという国家プロジェクトの中なら生まれた技術であることも知らずに、農水批判とは誠にけしからんと思った。もっと勉強すべきであるし、人事交流で九州や北海道、東北の研究機関を経験してほしいところである。
●生産者としての立場から、実際、病害虫防除や、技術面での相談を三重県と農研機構の両方に問い合わせても、私の納得いく回答をくれるのは、農研機構である。三重県の回答は普及所を軸に数少ない県内の専門スタッフの中での知恵に限られるが、農研機構の場合は、学術情報の中心である学会を軸にエリアを越えたネットワークで回答を得ることができる。ほうれん草のダニのことで問い合わせたら、三重県は害虫担当の方が対応してくれたが、農研機構関係者の害虫の専門家(農研機構OB)に問い合わせたところ、野菜の害虫の専門家にもかかわらず「私はその虫の専門家ではないので」ということで、わざわざ、奈良県に見える「ホコリダニの専門家」に問い合わせてくれて、納得のゆく回答を出してくれた。これには脱帽した。
●地方の大学と協力して三重県内でネットワークを作って、販売や人材育成の悩みを解決する集まりがあるから参加してみてはどうかとのこと。私は地域で傷のなめあいはしたくないし、大学のまつりごとにつきあう暇もない(※)。考えてほしい、なぜ私が「渡り鳥農業」を実践しているのかということを。私が目指しているのは、オールジャパンの農業であり、ローカルセクショナリズムの農業ではない。地域の特性を生かすならせめて東海3県レベルでやってほしい(東北秋田からすれば名古屋も三重も同じ、逆に三重からすれば秋田も山形も同じである)。
●結論は、ポリシーのない役人のまつりごとにつきあうことは非常に残念なことであるということである。
●付け加えておくが、三重県の多くの役人の方には大変感謝している。特に三重県庁の「ミヤタツ」さんなんかは、ポリシーがあって、前向きでお会いするだけで元気を頂く。そういった方々の期待に応えるべく、「三重県の農業振興=日本の農業振興」の視点でこれからのジャグロンズ、がんばっていきたい。
●もう一つ付け加えておくが、農研機構にも「残念な人」はいないとは断言できない。「火のないところに煙は立たない」のだから。要は、組織でいっぱからげて判断するのではなく、実際に個々にあって「残念な人」かそうでないかを判断する機会を持つことが大切である。※の批判じみた考えも、実際の人的交流を踏まえた結果から至った私の結論である。