◆農業機械の故障に直面したとき、2つの意見を耳にする。ひとつは、「そこは開けてはなりません、保障が効かなくなりますよ」。もうひとつは「あけてみなはれ、そうすれば真実が見えるよ」。

◆前者は、ディーラーの関係者のご意見。後者は私の師匠である大坂鉄工所の大坂勇さんのご意見である。もちろん私は後者の意見を取り入れることで多くのワクワク感を体験してきた。

◆このたび、昨年、宮城県から入手したイセキの管理ビークル「愛菜家」(KJA17D型)を、秋田兎農園から、三重安濃津農園に移動することになった。ところが昨年までは、順調だったディーゼルエンジンの調子が悪い。

◆燃料が満タンなのにエンジンがかかってもすぐに止まってしまう。燃料がエンジンに届いていないような症状だ。何とか三重まで運んだがその後まったく動かないので大変だ。積載車から降ろすことができないのだ。

◆燃料タンクからエンジンまでは、燃料ポンプの故障、燃料フィルターの目詰まり、燃料ホースのつまり、そして燃料タンク内の錆びによる燃料ホースの目詰まり。以上の4点を疑わなければならない。

◆まずはじめに疑ったのが燃料フィルターだ。イセキ津営業所にお願いして新品を取り寄せてもらい付け替えた。ついでに硬くなっていたゴム製の3本の燃料ホースもすべて新品に交換した。しかし2点を改善してもまったく動かない。残るは燃料ポンプと燃料タンクの2点。厄介だ。

◆燃料ポンプがうまく機能していないようなので燃料タンクからのゴムをはずしてみると、なんと、燃料タンクも詰まっている。両方とも問題ありだった。燃料タンクの詰まりの方は、ワイヤーを用いたカテーテル的処置により何とか解消したが、燃料ポンプが問題。アッセイ品を交換すると4万円近くになる。

◆「やっちゃえ日産」ならぬ「やっちゃえジャグロンズ」。ということで分解を敢行した。プラスのねじは分解できないように黄色い樹脂のようなものでねじ穴を埋めてある。ここで、「ねじザウルス」という道具を用いて上手にプラスチックカバーを外した。

◆「ウァオウ~」。中身は、きわめて巧妙なつくりで「からくり人形のような仕組みをしているように感じた」。三菱のマークがついている。たぶん日本製だろう。

◆これまで、分解したものの中では、金魚用のエアレーション装置の中身、あと、中学校時代に作った「電磁ベル」、そして古いトラクターのウインカーの点滅に用いられている銀色のリレーの中身のようなものにも似て見えた。

◆さらによーく観察すると、ちっちゃなばねの両端についているプラスチックのパーツの一つが熱で変形している。これによって、カクカク動くべき部分が動かなくなっていたのだ。

◆解けたプラスチックパーツがばねに融着していたので、ライターで暖めて剥離し、プラスチックパーツをやすりでやさしくこすってバリを取り除いた。

◆そして、丁寧に元通りに組み立てて、テスト通電のためキーを「オン」に。その結果「パコパコパコ~」。正常に動いた~!!その時、私の頭の中は、ドーパミンによる「メカニックハイ」の状態に遭遇していた。

◆以上、燃料タンクからの燃料供給が絶たれたことにより、燃料ポンプが空回りして熱を持ったためプラスチックパーツがばねに融着し、部品の稼動域が小さくなった結果燃料ポンプが正常に作動しなかったと考えられた。めでたしめでたし。

◆しかし、まだ油断はできない。燃料タンクの中にはさびか何かの問題がまだ潜んでいる。そこを改善しなければ根本的な改善にはつながらないのだ。(私の頭の中では1980年の映画「アリゲーター」の最後のシーンにオーバーラップしている。)