◆自分の積み重ねてきた経験を農業生産の現場に役立てる。そうした気持ちの高まりの中で実際の農業生産の現場に飛び込んだのが2008年。

◆研究メインの現場にいたときと違ったのは、仕事としての成果の挙げ方だった。

◆研究の現場では、テーマを自分で見つけてプレゼン等で、研究費を取りに行く、そして研究費がついたら研究を実行、そしてその成果を論文にまとめる。この論文作成を持って、研究費の領収書とする。これがかつての私のプロフェッショナルとしての仕事の流儀だった。

◆農業経営では、現場で作り上げたものを実際のお客様に流通、販売することが重要だ。技術者が農業のビジネスで失敗する要因として挙げられるのが、作ることだけで満足してしまうこと、必要以上に細部にこだわり過ぎて費用対効果の視点(パレートの法則:8対2法則)を失うこと。こうした過ちを犯さないための心構えが不可欠だ。

◆世の中に求められているものを作り、そして流通販売させる。農業経営は「作る」と「売る」で成り立つ(「作る」×「売る」=「農業経営」)。これを実践することが、現在の私のプロフェッショナルとしての仕事の流儀だ。

◆しかし私は不器用だ。どちらか一方に偏る傾向があり、結果としてまるでシーソーのように「作る」ことだけ、または「売る」ことだけへの取り組みに挑戦して、無駄や失敗を繰り返してしまう。だがしかし、そういった中でも自分のスタイルをブラッシュアップし続けている。

◆そうした中、数年前から気づいたことがある。「売る」ということは、積極的に自分の商品をアピールして売り込むことではないということに。取引対象になる業者さんや個人のお客さんなどにいくら自分の作ったものの魅力を売り込んだところで、商談成立とはならないのだ。

◆お客さんになりうる方のお話を聞く。これが、かなり重要だ。商品にはバランスが必要で「価格」と「品質」がちょうど「やじろべえ」の左右の錘のような関係にある。こういった現場の当事者として立ち会うことで現場の「ニーズ」を知ることができる。これがマーケティングの第一歩になる。

◆幸い私たちは「シーズ」をたくさん持ち合わせている。目標となる着地点がわかれば、いろんなスタイルでアレンジ可能だ。

◆先日、長年お世話になっている三重県内の量販店のバイヤーさんにお会いして話を聞く機会を得た。「三重県産の秋のほうれん草の安定供給先として藤原さんにお願いしたいので期待しています。」とのお言葉。大変ためになる「ニーズ」を知ることができた。

◆しかし、10年前と違ってこれからの時代は、9月と10月のほうれん草生産は「博打」「投機」以外の何者でもない。平均気温が高すぎる。25度を超える温度環境下ではほうれん草は育たないのだから。先ほど台風19号が通り過ぎていったが、気温が高いと大きな台風も発生し易くなる。

◆私のほうれん草の作り方は、一般的なほうれん草の作り方とは少し違っている。だから、この仕組みを応用すると、他の生産者より10日くらいは確実に早くかつ品質のよいものを供給することができる。しかし、9月中旬から10月中旬くらいまでは逆立ちしたってほうれん草の安定供給は不可能だ。「旬」ではないのだから。

◆そこで私たちの「シーズ」を基に閃いた。秋に旬の野菜があるのだ。東京都の伝統野菜だ。早速取引先の種屋さんに問い合わせて情報を収集。納得できる十分な情報を得ることができた。幸い私は15年前に京野菜の本場で、研究に取り組んでいたときの基礎研究の成果を「シーズ」として持ち合わせている。→https://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/warc/2003/wenarc03-14.html

◆「既存の野菜栽培」×「ジャグロンズ農法」=「新しい野菜ブランドの誕生」。このアウトラインの提案を来年の事業の提案書として作成し、再度バイヤーさんとの打ち合わせに臨みたい。「ほうれん草」ではないが、きっとびっくりする様な葉物野菜を誕生させる自信が私にはある。

◆百戦錬磨だが、ほぼ百戦百敗の藤原営業。プロの営業マンのようには決して行かないが、私にしかできない私だけのやり方があるはずだ。そんな、「諦め」と「達観」した思いが交錯しながら、何か清々しい気持ちが私の心の隙間を気持ちよくそよ風のように通り過ぎていった。

☆「歩く花」どうぞ→https://www.youtube.com/watch?v=tV5xep-47FQ

☆↑↓こんな時代もありました。これらの栄誉をさらに発展させて、未来の新しいサプライズ野菜の開発に着手します。