◆先日、私の師匠でメカニック職人の「大坂さん」が、自分よりもっと優れた職人として紹介してくれた電気屋職人の小松さん。その「小松さん」が、自分よりもっと優れた職人として紹介してくれたのが電気&機械職人の「藤田さん」だ。藤田さんは、現場に到着するや否やほぼ一瞬で、問題がどこにあるかを判断、特定し、不具合のあるパーツを取り替えること所要時間15分。そして、丁寧に技術の手の内を説明してくれる。本物の「プロフェッショナル」を目の前にした瞬間だった。

◆正確性と丁寧さ。そんな持ち味を持った人材(ここではTypeAと表記する)を良く見かける。また、時間まで確実に仕上げる仕事のスピード感を持ち合わせた人材(ここではTypeBと表記する)もこれまでに何人かいた。しかし、この両方を持ち合わせた人材(ここではTypeCと表記する)はなかなかいない。

◆TypeCが多く在籍するプロ集団はまさにドリームチーム。いかにしてドリームチームを作り上げるかが、経営者として関心のあるところだ。

◆TypeCを集めるためには2つのアプローチの仕方がある。まず1つはABCの3タイプをふるいにかけTypeCを選別するといった手法。これには、人材の数としてかなりの母数が必要だ。もう1つは、TypeA、またはTypeBの心材をTypeCに育てあげること。これは、一見無理に思える。いや、外的力でAまたはBをCに変えるのは絶対に無理だと私は思う。「もっと丁寧にやれ」というと「それでは時間がかかりますよ」と返ってくる。「もっと早くやれ」というと「できません」と返ってくる。人を変えること絶対にできない。

◆しかし、変わりたい人のお手伝いをすることは可能である。もし、AまたはBのタイプが内発的にCに憧れ、自分がそうありたいと願うならば、不可能は可能になる。私はそのように考える。

◆私の人材育成に対する考えの根本はそこにある。お金を頂いて勉強を教えて、資格を与える。そんな教育ビジネスではなく、学びたい人が働きながらスキルアップできる「寺小屋」的環境を提供することが今のジャグロンズの役割のひとつと考える。

◆経営者としては、自ら見本を示す一方で、そうした内発的エネルギーが生まれる環境を醸成していくことがまさに「夢の組織」を作るための方法なのだと思う。

◆ドイツの合理的思想であるヘーゲルの弁証法を引き合いに出すと、テーゼ(A)とアンチテーゼ(B)からジュンテーゼ(C)を生み出すそんな熱心さがこれからの技術者には必要だ。

◆技術者ではないが、最近これをやってのけた人が一人いると思う。それは、ピコ太郎さん。一生懸命考えた結果、「鉛筆」と「りんご」と「パイナップル」から世界的ブームを巻き起こした。まさに、錬金術的な出来事であり、「笑いの大きな発明である」とダウンタウンの松本さんがコメントしていたのを思い出す。これもイノベーションの1つといえるのではないだろうか。