■2006年の12月頃だったと思う。初めて飛び込みでほうれん草を売り込みにいったお店が、レストラン ラ・パルム・ドールだった。

■当時、「自分のオリジナルの技術でほうれん草を作る」ことに熱心であったが、出来上がったものが、いわゆる市場流通品と異なる性質があることが分かった。

■コモディティー商品(生活必需品)であるほうれん草は、「味」より「見た目」と「価格」が優先される。その結果、市場出荷では私のほうれん草は全く評価されず、それではと持ち込んだ近くのスーパーのバイヤーには、味なんかどうでもいいが、束ね方をもっと工夫してほしいといわれる始末。生粋の商売人ではない私は、この現状に憤りを感じ、次なる活路を目指しての第一歩を踏み出したのが津市内のレストラン等へのルート営業だった。

■その第一歩がレストラン ラ・パルム・ドールへの営業。突然のアポなし訪問に笑顔で快く対応してくださったのが、現在は総支配人として活躍中の切原真太郎さんだった。

■翌日には、副料理長の阪本勝治さん(現在は伊賀にあるビストロサンクhttp://s723.info/のオーナーシェフとして独立されている)からお電話いただき、畑まで足を運んで私のほうれん草を吟味していただいた。

■レストラン ラ・パルム・ドールのオーナーシェフの後藤雅司さんは、「料理の鉄人」に出演され、「塩の魔術師」として知られている。後藤さんには、その後、新聞の取材対応や、料理業界の方の紹介など、多岐にわたり大変お世話になった。

■しかし、ここ数年は、私の農業経営の試行錯誤の中で、直接プロの料理現場に足を運ぶことが少なくなり、疎遠になってしまっていた。

■その結果、私の仕事に何か物足りなさを感じることに気づき、昨年の12月、再び後藤シェフの元を訪ねたのだ。

■数年間のうちで、後藤シェフの環境も私のほうれん草も大きく変わっていた。今年の、1月には、私の農園で農薬を使わずに作ったサトイモ「サカエ1950」と、新作ほうれん草、ファイブスター「割り物三尺菊」をメニューに取り入れていただいた。

■先日、現在のスーシェフ木村力さんに、2月は、メニューが変わるので、1月とは違ったほうれん草を提供してほしいとの要望を受けた。色が濃くて甘さ控えめのストレートタイプをご希望されている。もちろん私のほうれん草は甘いものだけではない。ご要望があればどんなほうれん草だって提供させていただく準備はできている。

■「ほうれん草」+「情報」=「益荒男ほうれん草」が私の「益荒男ほうれん草」の定義なのだから。