◆3月4日に東京品川で行われたオイシックス・ラ・大地株式会社主催の「N-1サミット」という会合に参加した。そこで偶然出会ったのは、三重県明和町で有機農業を実践している「ななほし会」代表の野呂元士さんだ。野呂さんは、らでぃっしゅぼうやと取引がある生産者。今年は、通販マーケットの「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」「オイシッックス」の3ブランドが経営統合して初めての「N-1サミット」だ。全国に有機農業をはじめとするこだわりの農業を実践する日本国内の生産者約4000人の中から多くの生産者が東京品川に集まった。

◆さて、私がこの会議への参加でもっとも楽しみにしていたのが、最後の高島社長の挨拶だ、外部ではなかなか聞けないお話を判り易く明快に語ってくれる。私も経営者としての経験を増すにつれて、高島社長のやっていることの意義を理解できるようになってきた。高島社長とは親しい立場にはないので詳しいことはわからないが、私に足りない管理能力のようなものが極めて高く、淡々と経営者のなすべきことを実践されているのが魅力的だ。

◆高島社長曰く、有機農業運動の中から生まれ40年の歴史を持つ「大地を守る会」、市民運動の中から生まれ30年の歴史を持つ「らでぃっしゅぼーや」、そしてIT情報化社会の申し子として生まれ20年の歴史を積み重ねた「オイシックス」。この3つの会社の思いが、さらに大きく世の中に浸透する時代に突入している。今回の3ブランドの経営統合は、より効率的・効果的にに時代のニーズに応えて行くためのものになる。

◆私が立ち上げた、ジャパン・アグロノミスツ株式会社(通称名称:Jagrons ジャグロンズ)は、私の研究者時代の蓄積を活用すべく独自の生産技術で美味しくて安全な野菜を情報と共に提供することでわくわく感を届け、消費者の皆さんにハッピーになってもらえる野菜づくりに取り組んできた。ここで重要になることは、「良い物を作ること」と「それを伝えること」、この2つだ。前者についてはこの10年間で実現できているが、後者については、まだまだ程遠い段階だ。現在、ものづくりを辞めずに続けて来れれているのも「オイシックス」社との出会いによるところが大きい。オイシックス社が私たちの「益荒男ほうれん草」の情報をより多くの皆さんに発信してくれたことで現在がある。

◆「オイシックス社」の大きな発明は、IT情報技術の活用により「生産者の情報を伝えること」と「消費者の思いを生産者にフィードバックされること」。前者は、従来の紙媒体の通販システムでも行われてきた。しかし後者はこれまで十分に行うことができなかったことだ。

◆具体的には、「お客様の声」。「益荒男ほうれん草」へのお客様からの感想はこれまでに79件(3月7日現在)、今シーズン(2019年12月以降)に入ってからは12月8件、1月4件、2月17件、3月7日現在2件、今シーズンは、31件ものお客様の感想が寄せられている(情報元、オイシックスサイト)。その中で私が有難いと感じたのが次の2つのコメント。

☆☆☆☆☆(ピナママ様)

「感謝 生産者の方に感謝をしたくて投稿します。一歳7ヶ月になる娘は偏食が激しく緑のものは一切食べてくれなくなり途方に暮れておりました。 そんな時に藁をもすがる気持ちで購入したこちらのほうれん草は、娘がおかわりをする程気に入っており、茹でるだけの味付けなしで一握り分をペロリと食べました! 欠品を起こさずに生産してくださることに感謝です。これからも購入します。長く生産していただきたいです。」(オイシックスサイト、2019年2月22日より引用)

☆☆でかすぎよ(けい様)

「40センチ近くあるほど背が高いのが4株。 すじが固くて、甘さもいまいち。。。 小さいのがいっぱい来たときの方が抜群に美味しかったからがっかりしたー…… ほうれん草の根元のところが好きなので、小さいのがいっぱいだと根元の数が多いから嬉しいんだけどなぁ。 次回に期待!」 (オイシックスサイト、2019年1月6日より引用)

◆「オイシックス」で流通する野菜は、「お客様に評価されるか否か」、これが最も重要な要素。商社に買ってもらって売ってもらうシステムではない。お客様からの注文がなければそのシーズンの出荷量は激減する。一方、評価が高ければ、世の中のほうれん草価格の「相場」なんて全く関係なく順調な出荷量を確保できる。

◆IT技術を使ってタイムリーに生産者と消費者とをつなぐ。これが、オイシックス社の大きな発明だ。しかし、この土俵で一生産者が勝負するには、個性や主張のある商品が不可欠だ。ポリシーもスペックもない商品では、経営的に非常に厳しい結果をもたらす可能性のある土俵。いわば弱肉強食の世界でもあるのだ。

◆オイシックス社のシステムはそんな「諸刃の剣」の要素も備えていることを覚悟しなければならない。しかし、「オイシックスブランド」の生産者の立場で農業生産に取り組むということは、情報化社会の中で、「お客様の声」を羅針盤に新しい農業のあり方の最先端を実践している。そんな自負が私たちにはある。よりマニアックな情報を、当社サイトからも随時発信しながら、どんな時代になって行くのか分からないこの先も、ぶれずに、「日本のものづくり」を実践して行きたい。