◆「水遣り三年」という言葉がある。25年前、野菜・茶業試験場に就職して、野菜作りにかかわる仕事に就き、初めてこの言葉を聞いたとき、私は潅水技術を身につけるまで3年かかるという意味だと思っていた。

◆そんなにかかるんだったら、誰も農業を続けることはできないと感じた私は、誰でも簡単に一定水準の結果が出せられるような方法を考えた。そして起業後はこれを農業を志す若者たちへの最初のミッションとして与えた。一見、誰にでも簡単にできるように見えた。

◆私の観察の結果、ある若者は、倦(う)まず弛(たゆ)まず、潅水を続けた。しかしなぜか苗が病気にかかりやすかった。またある若者は、同じことの繰り返しに発狂しかけながらも、同じことを続けた。一部の苗は萎れて枯れかけたが、不思議と病気は出なかった。そして、さらにまたある若者は、虫の発生の様子に深い関心を示した。

◆そうして野菜の苗に水をやる何人かの若者の姿を通して見えてきたものがある。苗への水遣りの姿勢に、まるで「あぶり出し」のようにその人間性が現れるということ、それは3年くらいやれば確実に現れる。

◆何が良くて何が悪いといった話しではない。人間、誰でも短所と長所がある。それは、人間の癖のようなもの。「なくて七癖」である。

◆自分の現状を客観的に把握することができれば、自らを改善できる。

◆私自身、最近、水遣りの時間がやたら長くかかることに問題を感じ、「イノベーション」に着手した。

◆一般的な井戸のポンプでくみ上げた水では、水圧に限界がある。なので、如雨露の先も絞ったものを使い遠くに飛ばす工夫がなされる。しかしこれが仮に、1分間に7L散水できるとしたら、150L散水するのに30分近くかかってしまう。

◆前稿(http://jagrons.com/2018/05/14/1227/)で触れた「精度とスピード」の話題で登場するTypeAとTypeB。どちらかといえば私は後者。だがしかし、私は既にTypeC(ジュンテーゼ)。なぜかというと、、、、

◆300Lのリザーバータンクを準備し、それに水を満タンにためた。そして、1分間に70Lくみ上げることのできる投げ込み式のポンプを導入、実際は、30L/1分くらいの散水効率を確保。潅水の所要時間30分を5分程度に短縮してしまったのだから。。。。

◆これは従来と比べて1ヶ月で12.5時間の時間を生み出したことになるが、これも1つのイノベーション。身近な一歩一歩の改善が、後の大きな前進につながるのだ。