◆高畝マルチ栽培では、完璧に100%の出来栄えで作業できたとしても、そのままでは、マルチがはがれる危険性が高い。マルチが剥げるのは次のような仕組みによる。

①日射により温度上昇したフィルムが伸びる。そして、天面が風によりばたつく。②特に畝に対して直角に吹き付ける風に弱く、秒速10mくらいの風で確実にはがれる。

◆マルチが剥げないようにするには、畝の天面にしっかりと土を乗せることが不可欠である。以前は、この作業をすべて鍬を使って人力で行っていた。栽培面積が3ヘクタールに達した頃。多くのスタッフが手に豆をつくり、負傷した。ある者は休養し、またある者は去っていった。

◆この問題を大きく解決したのが、「マメトラスコッパー」だ。メカニックスタッフの佐々木氏と私藤原が、試行錯誤の末、白ねぎ栽培用の管理機に手を加えて出来上がったものである。

10aの作業時間は約15分(土壌の質により異なる)。全量マルチ+移植栽培のエダマメ栽培では前人未到の10ヘクタール越えを現実のものにするためには欠かせないジャグロンズの「秘密兵器」なのだ。

◆「水遣り三年」という言葉がある。25年前、野菜・茶業試験場に就職して、野菜作りにかかわる仕事に就き、初めてこの言葉を聞いたとき、私は潅水技術を身につけるまで3年かかるという意味だと思っていた。

◆そんなにかかるんだったら、誰も農業を続けることはできないと感じた私は、誰でも簡単に一定水準の結果が出せられるような方法を考えた。そして起業後はこれを農業を志す若者たちへの最初のミッションとして与えた。一見、誰にでも簡単にできるように見えた。

◆私の観察の結果、ある若者は、倦(う)まず弛(たゆ)まず、潅水を続けた。しかしなぜか苗が病気にかかりやすかった。またある若者は、同じことの繰り返しに発狂しかけながらも、同じことを続けた。一部の苗は萎れて枯れかけたが、不思議と病気は出なかった。そして、さらにまたある若者は、虫の発生の様子に深い関心を示した。

◆そうして野菜の苗に水をやる何人かの若者の姿を通して見えてきたものがある。苗への水遣りの姿勢に、まるで「あぶり出し」のようにその人間性が現れるということ、それは3年くらいやれば確実に現れる。

◆何が良くて何が悪いといった話しではない。人間、誰でも短所と長所がある。それは、人間の癖のようなもの。「なくて七癖」である。

◆自分の現状を客観的に把握することができれば、自らを改善できる。

◆私自身、最近、水遣りの時間がやたら長くかかることに問題を感じ、「イノベーション」に着手した。

◆一般的な井戸のポンプでくみ上げた水では、水圧に限界がある。なので、如雨露の先も絞ったものを使い遠くに飛ばす工夫がなされる。しかしこれが仮に、1分間に7L散水できるとしたら、150L散水するのに30分近くかかってしまう。

◆前稿(http://jagrons.com/2018/05/14/1227/)で触れた「精度とスピード」の話題で登場するTypeAとTypeB。どちらかといえば私は後者。だがしかし、私は既にTypeC(ジュンテーゼ)。なぜかというと、、、、

◆300Lのリザーバータンクを準備し、それに水を満タンにためた。そして、1分間に70Lくみ上げることのできる投げ込み式のポンプを導入、実際は、30L/1分くらいの散水効率を確保。潅水の所要時間30分を5分程度に短縮してしまったのだから。。。。

◆これは従来と比べて1ヶ月で12.5時間の時間を生み出したことになるが、これも1つのイノベーション。身近な一歩一歩の改善が、後の大きな前進につながるのだ。

◆先日、私の師匠でメカニック職人の「大坂さん」が、自分よりもっと優れた職人として紹介してくれた電気屋職人の小松さん。その「小松さん」が、自分よりもっと優れた職人として紹介してくれたのが電気&機械職人の「藤田さん」だ。藤田さんは、現場に到着するや否やほぼ一瞬で、問題がどこにあるかを判断、特定し、不具合のあるパーツを取り替えること所要時間15分。そして、丁寧に技術の手の内を説明してくれる。本物の「プロフェッショナル」を目の前にした瞬間だった。

◆正確性と丁寧さ。そんな持ち味を持った人材(ここではTypeAと表記する)を良く見かける。また、時間まで確実に仕上げる仕事のスピード感を持ち合わせた人材(ここではTypeBと表記する)もこれまでに何人かいた。しかし、この両方を持ち合わせた人材(ここではTypeCと表記する)はなかなかいない。

◆TypeCが多く在籍するプロ集団はまさにドリームチーム。いかにしてドリームチームを作り上げるかが、経営者として関心のあるところだ。

◆TypeCを集めるためには2つのアプローチの仕方がある。まず1つはABCの3タイプをふるいにかけTypeCを選別するといった手法。これには、人材の数としてかなりの母数が必要だ。もう1つは、TypeA、またはTypeBの心材をTypeCに育てあげること。これは、一見無理に思える。いや、外的力でAまたはBをCに変えるのは絶対に無理だと私は思う。「もっと丁寧にやれ」というと「それでは時間がかかりますよ」と返ってくる。「もっと早くやれ」というと「できません」と返ってくる。人を変えること絶対にできない。

◆しかし、変わりたい人のお手伝いをすることは可能である。もし、AまたはBのタイプが内発的にCに憧れ、自分がそうありたいと願うならば、不可能は可能になる。私はそのように考える。

◆私の人材育成に対する考えの根本はそこにある。お金を頂いて勉強を教えて、資格を与える。そんな教育ビジネスではなく、学びたい人が働きながらスキルアップできる「寺小屋」的環境を提供することが今のジャグロンズの役割のひとつと考える。

◆経営者としては、自ら見本を示す一方で、そうした内発的エネルギーが生まれる環境を醸成していくことがまさに「夢の組織」を作るための方法なのだと思う。

◆ドイツの合理的思想であるヘーゲルの弁証法を引き合いに出すと、テーゼ(A)とアンチテーゼ(B)からジュンテーゼ(C)を生み出すそんな熱心さがこれからの技術者には必要だ。

◆技術者ではないが、最近これをやってのけた人が一人いると思う。それは、ピコ太郎さん。一生懸命考えた結果、「鉛筆」と「りんご」と「パイナップル」から世界的ブームを巻き起こした。まさに、錬金術的な出来事であり、「笑いの大きな発明である」とダウンタウンの松本さんがコメントしていたのを思い出す。これもイノベーションの1つといえるのではないだろうか。

◆ファーム*ジャグロンズ「兎農園」のエダマメの出荷期間はほぼ1ヶ月。栽培面積が、3ヘクタールでも9ヘクタールでも1ヶ月は変わらない。栽培面積が3倍になっても、スタッフの人数は3倍にはならない。3ヘクタールのときとほぼ変わらない人数だ。

◆何でだろう~何でだろう~何でだ何でだろう~。

◆それは、常にイノベーションを起こしているからだ。

◆今回紹介するのは、「施肥専用トラクター」ヤンマーAF22MarkⅢ。

◆これまで、「有機入り化成肥料」と「鶏ふん」は、個々の作業機で個別に施用していた。それでは、オペレーター要員が2人必要だ。

◆スタッフが病気で休んだときなど、予定通りに行かないことがきっかけで生まれた作業機。それが「施肥専用トラクター」AF22MarkⅢだ。前後に施肥機を搭載している。

◆トラクターの前につけたライムソワーで有機入り化成肥料を施用、後ろについた施肥機ではペレット鶏糞を施用する。幅広に据え付けたタイヤは、畝たてマルチ専用機のラインマーカーとしても機能する。①ラインマーカー、②化成肥料の施用、③鶏糞の施用、以上3つの作業を1工程で行える優れものである。

◆作業効率の期待値は12分/10a・1人(実測地は今後のジャグロンズレコードで追って紹介する予定)

◆本機は、三重県津市で車両登録している車両だが、現在、秋田県美郷町で更なる進化を遂げて活躍中。秋に三重に帰ってからのほうれん草生産でも大活躍してくれるはず。「ファーム*ジャグロンズ2018夏の陣」が終わったら、前輪タイヤを新品に換えて愛情こめたメンテナンスを施す予定だ。