◆今年はヒヨドリの数が少なく感じる。しかし、確実にほうれん草を食べている。それも美味しいほうれん草だけを。先日、珍しい現象に直面した。ここ最近の降雨に備えるため収穫してトラックごと日陰に保管しているところに、ヒヨドリがやってきて収穫後のコンテナのほうれん草を食べているのだ。どうしてこの場所を知っているのか?もしかして、ストーキング?畑からベースステーションに追跡してきたのだろうか?

◆ところで先日、取引先との連絡の中で、益荒男ほうれん草が美味しくなくなった。「甘くないほうれん草は益荒男ほうれん草ではない。」との連絡を頂いた。現在のほうれん草の糖度は、8~10度(Brix%)を目安に出荷のタイミングを慎重にナーバスになりながら出荷している(一般のほうれん草は3~5度といわれている)。お客様からのこのような声は以前からも頂いている。数値のスペックは規定の範囲内なのに食べる人の美味しさの感じ方が変わってくること、それが、益荒男ほうれん草の「3月クライシス」だ。

◆「3月クライシス」の仕組みは次の通り。益荒男ほうれん草の糖度は11月下旬から上昇し始め3月から4月にかけてフェードアウトする(イメージ図参照)。美味しいほうれん草の範疇として葉柄基部の糖度が8~11度を目安に出荷しているが、1月と2月は「美味しすぎる益荒男ほうれん草」ができてしまう。これが原因で3月クライシスが引き起こされる。12月と3月は同じ糖度9であっても、甘すぎるほうれん草を食べる前の9度と甘すぎるほうれん草を食べてしまった後の9度では、人の感じ方は全く異なるのだ。残念!!

◆この問題点の解決策は2つ、一つは、1月と2月の品質のものをあえて世の中に流通させないこと。そうすれば、12月から3月まで通して美味しいと感じてもらえるほうれん草を提供できる。そしてもう一つは、情報を的確に把握しお客様に伝えること。前者は、理屈としてはありえる話だが、非現実的である。やはり、後者がこれから積極的に取り組むべき解決策だと思う。

◆お客様目線だけでは、1年中生で食べられるアクのないほうれん草でなければならないのだろうけれどそんなのは無理だ。その時々でできる最善の技術でできたものを正当に評価してもらえるように生産現場から消費者の皆さんに直接メッセージを発信することが重要だと考える。

◆3月~4月の益荒男ほうれん草は、糖度の基準をクリアーするように努めて出荷していますが、春の野菜はアクが出てきます。オリーブ油やカルシウムを多く含んだものと一緒に食べていただきたいほうれん草です。

◆消費者の皆さん、ご理解のほど宜しくお願いします。

◆そして、来季は、12月から2月にかけて飛びっきり甘いほうれん草を作って皆さんをもっとたくさん作って驚かせたいと思います。世界で唯一つの生産技術「ジャグロンズ農法」は、有機農法でもない無農薬農法でもない、「科学的農法」の一つです。これからもHPを通して情報発信に努めます。

◆さて、今日の朝、またもや意外な出来事が起きました。またヒヨドリがらみです。次回の投稿は「そこまでやるのかヒヨドリ君」、です。皆様、お楽しみに。

 

◆3月4日に東京品川で行われたオイシックス・ラ・大地株式会社主催の「N-1サミット」という会合に参加した。そこで偶然出会ったのは、三重県明和町で有機農業を実践している「ななほし会」代表の野呂元士さんだ。野呂さんは、らでぃっしゅぼうやと取引がある生産者。今年は、通販マーケットの「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」「オイシッックス」の3ブランドが経営統合して初めての「N-1サミット」だ。全国に有機農業をはじめとするこだわりの農業を実践する日本国内の生産者約4000人の中から多くの生産者が東京品川に集まった。

◆さて、私がこの会議への参加でもっとも楽しみにしていたのが、最後の高島社長の挨拶だ、外部ではなかなか聞けないお話を判り易く明快に語ってくれる。私も経営者としての経験を増すにつれて、高島社長のやっていることの意義を理解できるようになってきた。高島社長とは親しい立場にはないので詳しいことはわからないが、私に足りない管理能力のようなものが極めて高く、淡々と経営者のなすべきことを実践されているのが魅力的だ。

◆高島社長曰く、有機農業運動の中から生まれ40年の歴史を持つ「大地を守る会」、市民運動の中から生まれ30年の歴史を持つ「らでぃっしゅぼーや」、そしてIT情報化社会の申し子として生まれ20年の歴史を積み重ねた「オイシックス」。この3つの会社の思いが、さらに大きく世の中に浸透する時代に突入している。今回の3ブランドの経営統合は、より効率的・効果的にに時代のニーズに応えて行くためのものになる。

◆私が立ち上げた、ジャパン・アグロノミスツ株式会社(通称名称:Jagrons ジャグロンズ)は、私の研究者時代の蓄積を活用すべく独自の生産技術で美味しくて安全な野菜を情報と共に提供することでわくわく感を届け、消費者の皆さんにハッピーになってもらえる野菜づくりに取り組んできた。ここで重要になることは、「良い物を作ること」と「それを伝えること」、この2つだ。前者についてはこの10年間で実現できているが、後者については、まだまだ程遠い段階だ。現在、ものづくりを辞めずに続けて来れれているのも「オイシックス」社との出会いによるところが大きい。オイシックス社が私たちの「益荒男ほうれん草」の情報をより多くの皆さんに発信してくれたことで現在がある。

◆「オイシックス社」の大きな発明は、IT情報技術の活用により「生産者の情報を伝えること」と「消費者の思いを生産者にフィードバックされること」。前者は、従来の紙媒体の通販システムでも行われてきた。しかし後者はこれまで十分に行うことができなかったことだ。

◆具体的には、「お客様の声」。「益荒男ほうれん草」へのお客様からの感想はこれまでに79件(3月7日現在)、今シーズン(2019年12月以降)に入ってからは12月8件、1月4件、2月17件、3月7日現在2件、今シーズンは、31件ものお客様の感想が寄せられている(情報元、オイシックスサイト)。その中で私が有難いと感じたのが次の2つのコメント。

☆☆☆☆☆(ピナママ様)

「感謝 生産者の方に感謝をしたくて投稿します。一歳7ヶ月になる娘は偏食が激しく緑のものは一切食べてくれなくなり途方に暮れておりました。 そんな時に藁をもすがる気持ちで購入したこちらのほうれん草は、娘がおかわりをする程気に入っており、茹でるだけの味付けなしで一握り分をペロリと食べました! 欠品を起こさずに生産してくださることに感謝です。これからも購入します。長く生産していただきたいです。」(オイシックスサイト、2019年2月22日より引用)

☆☆でかすぎよ(けい様)

「40センチ近くあるほど背が高いのが4株。 すじが固くて、甘さもいまいち。。。 小さいのがいっぱい来たときの方が抜群に美味しかったからがっかりしたー…… ほうれん草の根元のところが好きなので、小さいのがいっぱいだと根元の数が多いから嬉しいんだけどなぁ。 次回に期待!」 (オイシックスサイト、2019年1月6日より引用)

◆「オイシックス」で流通する野菜は、「お客様に評価されるか否か」、これが最も重要な要素。商社に買ってもらって売ってもらうシステムではない。お客様からの注文がなければそのシーズンの出荷量は激減する。一方、評価が高ければ、世の中のほうれん草価格の「相場」なんて全く関係なく順調な出荷量を確保できる。

◆IT技術を使ってタイムリーに生産者と消費者とをつなぐ。これが、オイシックス社の大きな発明だ。しかし、この土俵で一生産者が勝負するには、個性や主張のある商品が不可欠だ。ポリシーもスペックもない商品では、経営的に非常に厳しい結果をもたらす可能性のある土俵。いわば弱肉強食の世界でもあるのだ。

◆オイシックス社のシステムはそんな「諸刃の剣」の要素も備えていることを覚悟しなければならない。しかし、「オイシックスブランド」の生産者の立場で農業生産に取り組むということは、情報化社会の中で、「お客様の声」を羅針盤に新しい農業のあり方の最先端を実践している。そんな自負が私たちにはある。よりマニアックな情報を、当社サイトからも随時発信しながら、どんな時代になって行くのか分からないこの先も、ぶれずに、「日本のものづくり」を実践して行きたい。

  • ◆2007年に誕生した「益荒男ほうれん草」の第一号が「ゴールデンタイプ」。
  • ◆古いタイプのF1種子「トライ」を使用して、ジャグロンズ農法で作った益荒男ほうれん草です。
  • ◆この品種は、病気にかかりやすく、収量重視の一般的な栽培方法では全く食味が良くありません。
  • ◆私たちは試行錯誤の末、三重県津市において11月に植えつけて1月~2月に収穫する作型がもっともこの品種の潜在能力を引き出す栽培方法であることを突き止めました。
  • ◆葉色は淡緑色で肉質は柔らかく、赤紫色に発色した株元が美しいほうれん草。収穫適期の糖度は10度~15度に達します。
  • ◆元来サラダ用のほうれん草ではありませんが、プロの料理人の方からは、ほうれん草サラダの素材として用いられることの多い益荒男ほうれん草です。

◆「益荒男ほうれん草」ファンの皆様へ

◆今回は現在出荷している「益荒男ほうれん草」を草姿と葉色で分類整理してみました。

※↓本稿の画像は「ゴールデン」タイプです。

☆現在出荷の中心は、「ファイブスター」ついで、「ゴールデン」。この2タイプは性質的に対極にあるほうれん草です。

☆「ゴールデン」は、立性(ストレートタイプ)で、葉が柔らかく、葉色が山吹色(黄金色)、そして茎の根元が鮮やかな赤紫色をしているのが特徴です。

☆一方、「5☆ファイブスター」は、匍匐(ほふく)性(ロゼットタイプ)で、葉が肉厚でしっかりしており、葉色は濃緑色(完熟期を迎えたものは、カッパーブラウンの斑紋が現れます)、葉柄は短く茎の根元は赤くなりません。

☆どちらのタイプも、甘さは15度以上に達することも珍しくありません。

☆さて、皆さんのお手元に届くのはどんなほうれん草でしょうか?

 

 

■2006年の12月頃だったと思う。初めて飛び込みでほうれん草を売り込みにいったお店が、レストラン ラ・パルム・ドールだった。

■当時、「自分のオリジナルの技術でほうれん草を作る」ことに熱心であったが、出来上がったものが、いわゆる市場流通品と異なる性質があることが分かった。

■コモディティー商品(生活必需品)であるほうれん草は、「味」より「見た目」と「価格」が優先される。その結果、市場出荷では私のほうれん草は全く評価されず、それではと持ち込んだ近くのスーパーのバイヤーには、味なんかどうでもいいが、束ね方をもっと工夫してほしいといわれる始末。生粋の商売人ではない私は、この現状に憤りを感じ、次なる活路を目指しての第一歩を踏み出したのが津市内のレストラン等へのルート営業だった。

■その第一歩がレストラン ラ・パルム・ドールへの営業。突然のアポなし訪問に笑顔で快く対応してくださったのが、現在は総支配人として活躍中の切原真太郎さんだった。

■翌日には、副料理長の阪本勝治さん(現在は伊賀にあるビストロサンクhttp://s723.info/のオーナーシェフとして独立されている)からお電話いただき、畑まで足を運んで私のほうれん草を吟味していただいた。

■レストラン ラ・パルム・ドールのオーナーシェフの後藤雅司さんは、「料理の鉄人」に出演され、「塩の魔術師」として知られている。後藤さんには、その後、新聞の取材対応や、料理業界の方の紹介など、多岐にわたり大変お世話になった。

■しかし、ここ数年は、私の農業経営の試行錯誤の中で、直接プロの料理現場に足を運ぶことが少なくなり、疎遠になってしまっていた。

■その結果、私の仕事に何か物足りなさを感じることに気づき、昨年の12月、再び後藤シェフの元を訪ねたのだ。

■数年間のうちで、後藤シェフの環境も私のほうれん草も大きく変わっていた。今年の、1月には、私の農園で農薬を使わずに作ったサトイモ「サカエ1950」と、新作ほうれん草、ファイブスター「割り物三尺菊」をメニューに取り入れていただいた。

■先日、現在のスーシェフ木村力さんに、2月は、メニューが変わるので、1月とは違ったほうれん草を提供してほしいとの要望を受けた。色が濃くて甘さ控えめのストレートタイプをご希望されている。もちろん私のほうれん草は甘いものだけではない。ご要望があればどんなほうれん草だって提供させていただく準備はできている。

■「ほうれん草」+「情報」=「益荒男ほうれん草」が私の「益荒男ほうれん草」の定義なのだから。

●12月から3月は「益荒男ほうれん草」の出荷最盛期。

●只今、旬の「益荒男ほうれん草」は、「ゴールデン」タイプ、「アフロ」タイプ、そして「ファイブスター」タイプ。

●ジャグロンズのほうれん草、相変わらず見た目はスマートでありませんが、味に妥協はありません。

●ジャグロンズの隠れキャラ的ほうれん草の「高虎ほうれん草」も、全国神出鬼没で流通中。見つけたら即購入をお勧めします。

●直売会開始も、忙しすぎて叶いません。農場直接購入希望の方は、予約販売とさせていただきますので、ご連絡ください。

●問い合わせ先は、こちらまで→jagrons★gmail.com(★を@に換えて、ご連絡ください。)電話番号をお知らせいただければ、こちらから折り返し連絡させていただきます。

 

 

◆ファーム*ジャグロンズ「安濃津農園」に最も近いレストランが、安濃町曽根にある「ランセン」だ。http://www.jagrons.com/archives/2007/04/post_33.html

◆先月、数年ぶりにお店の、マスターを訪ねたところ。ほうれん草を大変気に入っていただき旬のメニューが誕生した。

◆嬉しくなってお店の写真を取らせていただいた。現在「益荒男ほうれん草」を使ったメニューが2種類あります。ぜひとも食べに行ってみてください。

◆2019年1月、「益荒男ほうれん草」に、新作が誕生した。産地は三重県津市安濃町にあるファーム*ジャグロンズ「安濃津農園」。

◆その名は、「割物三尺菊」(わりものさんしゃくぎく)。1株当たりの重量が200gを超える、直径30㎝~40㎝の大きな円を描くロゼット型のほうれん草で、ファイブスターの変り種である。

◆ジャグロンズのほうれん草の生産現場では、常に新しいことにチャレンジし、技術を深化させ、毎年の同じことに新しいことを一つずつ積み重ねている。

◆今年は、「温暖化」と「降雨量の増加」を意識した生産技術体系を導入した。その結果、1月に偶然私の目の前に現れたのがこの「ニュータイプ益荒男ほうれん草」。3日前にインスピレーションが湧き、故郷秋田の「大曲の花火」に思いを馳せて命名した。

◆「益荒男ほうれん草」シリーズの5☆(ファイブスター)に属する「割物三尺菊」。もちろん現在の糖度は15度前後、甘さと味わいと色の濃さ、三拍子揃ったプロ向けの「益荒男ほうれん草」である。

◆「益荒男ほうれん草」の中で最大級の大きさのためボードン袋(透明な袋)に入れた通常のリテール品での出荷は叶わないが、早速プロの調理現場に受け入れられて高い評価を頂いている。

◆1月28日には、津市安濃町内の学校給食で初めてこの「割物三尺菊」が活用されることになっている。

◆現在唯一つの不安は、「益荒男ほうれん草」を象徴する野鳥「ヒヨドリ」の洗礼を受けることである。(ロゼット型の益荒男ほうれん草は、ヒヨドリの洗礼を受けると出荷不能になるのだ。)

◆朝5時に起床、5時半の電車で津から名古屋まで移動。朝飯は名古屋駅のきしめん。

◆新幹線「のぞみ」で東京まで。東京からは都営地下鉄丸の内線で新宿三丁目駅で下車。そこはもう伊勢丹新宿店の入り口だ。10時30分到着。無事お売り場の朝礼に間に合った。

◆地下1階の青果売り場は、ジャグロンズのほうれん草が「益荒男ほうれん草」という名前で初めて販売された記念すべき「お売り場」だ。あれから10年、今回は、小林店長の計らいで朝礼でスタッフの皆さんに私から一言ほうれん草の紹介をさせていただく機会を頂いたのだ。

◆今回の「益荒男ほうれん草」は「ゴールデン」タイプ。実は既に、名前を隠した状態で、伊勢のサークルの仲間に食べてもらう密かなモニタリングを実施。30サンプルのうち1件熱狂的な支持の感想を得ることができた。定性マーケティングとしては、上々の反応だ。

◆以前バイヤーさんから教えていただいたことがある。「益荒男ほうれん草」のような、コモディティー商品(生活必需品)としてのほうれん草のカテゴリーから逸脱した商品を購入してくれる人の割合は、伊勢丹新宿店のようなプレミア志向のお売り場では80人に1人(村山バイヤー)、マックスバリューでは、2000人に1人(白塚バイヤー)と言われている。予備マーケティング調査では30人に1人だからかなりいけるはず。

◆今回は、「益荒男ほうれん草」ゴールデンタイプを12kgを準備した。「益荒男ほうれん草」は伊勢丹新宿店唯一の量り売りほうれん草、1kg当たり2000円というお肉のような価格での評価を頂いている。にもかかわらず5時間程度でほぼ完売してしまった。しかし、今回は、完全に私の失態。準備する量が足りなかった。

◆生産者のこだわり(ストーリー)と生産物のスペック(データと体験)をお客さまに伝えることができれば、まだまだ「益荒男ほうれん草」は、多くの人の支持を得ることができる。あとは、このことを多くの人に伝える伝導師(エバンゲリスト)の育成が必要だ。

◆現状では野菜の専門家でも、「益荒男ほうれん草」の解説をするのは困難だ。なぜかというと、「益荒男ほうれん草」は私、藤原隆広が創り上げた創作野菜だから。早急に、これまでのコンテンツをまとめて、更なる「益荒男ほうれん草」に関する情報の発信を急がなければならない。

◆本日は、日本のお客様はもちろんのこと、英語のお客様、中国語のお客様ともなれない外国語でコミュニケーションをとることができ大変刺激的な一日を過ごすことができました。伊勢丹新宿店クイーンズ事業部青果売り場の小林店長をはじめ、鈴木さん、古賀さん、そして野菜ソムリエの小島さんには大変お世話になりました。ありがとうございました。

◆新宿から東京まで、丸の内線で移動、東京駅17時44分発の秋田新幹線に乗り無事21時3分大曲駅着。外は一面真っ白な粉雪に包まれていた。